與那嶺恵理 UCI 世界選手権 女子エリートタイムトライアル レビュー

スタート

photo by Sonoko Tanaka

1) 目標、世界選手権10位以上。
この順位を獲得すると、ブラジルオリンピックへの出場枠が確保できます。

 

2) 結果 18位

3)データ

走行距離30km(15km周回コースを2周)

優勝者タイム 40:30

與那嶺タイム42:40 (Behind 2:10)

出力 第1lap AV-278w 第2lap AV-260w
(身長 161cm 体重 50kg)

使用機材
フレーム SwiftCarbon N-gen XS
ホイール
フロント イーストン EC90 エアロ チューブラー
リア ライトウエイト ディスク チューブラー
タイヤ スペシャライズド Turbo チューブラー
空気圧 フロント 7.0Bar リア 7.4Bar
コンポーネント シマノ Di2 9070 11S
クランク ROTOR Power-2 max 170mm
Fギア 53-39 ROTOR Qリング
Rギア 11-28 SHIMANO 9000

距離 30km
路面状況 かなり重い石畳に粗いコンクリート舗装
天候 曇り
気温 20度前後 良い状況
風向き 強い風が様々な位置から吹く。ビル風もキツイ。
湿度 92% 風 5mph

4)セッティングの考察

バイクポジション
JISSでの風洞実験を積み重ねて、おおよその傾向は理解することができました。
あとは、ライダーのフィーリングとpowerdataを見ながら、微調整を積み重ねました。

エアロフォーム 空気抵抗
JISSでの風洞実験での検証を行い、適切な準備を行いました。
シューズカバーは抵抗が増えることを実証し、外すことにしました。
ホイールは横風を考えながら、最適な選択を行いました。
バトンホイールも選択肢としては有り得ましたが、バトンホイールは横風の影響が大きいため、当日の風の状況を見た結果、選択せず。

タイヤ、空気圧
タイヤはコーナーグリップが一番高く、パンクしにくいタイヤを選択。転がり抵抗値が低いタイヤより、グリップや耐パンク性能を優先させるのは、目標順位に対し、必要なフィジカルデータを保持しているため。機材ではリスクを取らずに、最後まで安全にゴールしてもらうことを最優先。

空気圧は本人にとってのベストな値を探った結果、基本はこの数値に設定。コースによって少し調整する。今回はコースによる微調整は不要と判断。
タイヤ幅は24C。5年ほど前は19C前後が主流だったが、現在は24c幅が一番エネルギーロスが少ないという研究データが出ている為。

5)
現地に入ってからのトレーニングメニュー。

固定化せずに、日々本人と体調と対話を行いながら調整を行った。

16日 水曜日 時差ボケ解消 と 体調を整えるロードワーク
ロードワーク Total 3時間
ロードコース 3LAP
アベレージ走 1h
体幹補強トレーニング 1h

17日 木曜日 フィジカルコンディションの確認 interval
ロードワーク Total 4h
ロードコース 1LAP
interval 2h 体重の5.5倍。5倍。1分走 20セット
イージースピン 1h
体幹補強トレーニング 1h

18日 金曜日 フィジカルコンディションの確認
ロードワーク Total 3h
30分走 4セット 体重の4倍。
イージースピン 1h
体幹補強トレーニング 1h

19日 土曜日 タイムトライアル準備開始 ポジション最終煮詰め
ロードワーク Total 4h
TTコース試走 3LAP
苦手個所は何度も行う。

TTバイク ミドル走
30分走 4セット 体重の4倍。
イージースピン 1h

20日 日曜日 一番きついinterval。最後の追い込み。
ロードワーク Total 3h
早朝 TTコース試走 1LAP
苦手個所は何度も行う。

interval 6倍走 30秒 1分30秒レスト 20セット
各セット 最後の10秒は後方から私がプッシュしてさらに追い込む。
イージースピン 1h

21日 月曜日 リカバリー
早朝 TTコース 2LAP
イージースピン 1h

ここまでで、レース目標順位に向け、必要なトレーニングはすべてやり切った感があります。
パワーウエイトレシオ値は、間違いなく世界のトップ10に入っています。
そのパワーを適切に引き出せる練習も行えました。
本人も、やり切った大きな自信をもって、レースに臨むことができました。

しかし、TTコースのコーナリングには、問題を抱えていました。これは我々の共通認識でした、残念ながらこの問題は改善しきれなず、ここが悔やまれます。

レース当日
22日 火曜日
早朝 TTコース 1LAP
コースの最終確認と苦手場所の安全ラインの確認

その後、ゆっくりパン屋で朝食。
15時のスタートに向け、コース横のホテルで体を休める。

スタート前のアップは、舗装路での徒歩スピードコーナリング練習。
ぐるぐる回って、身体の動きをしっかりと把握し動きやすい状態へ。
ローラーアップは20分ほど、イージースピン。
そしてスタート。

6)当日の戦略

出力とフィジカルは充分に、私も安心できる状態にできましたが、コーナリングと、そのつなぎに問題を抱えた状況。具体的には、体幹がとても弱いため、身体の抑えがきかずに荒れた路面、ハイスピードでのコーナリングGに耐えられず、コーナークリアスピードが遅くなる。その傾向は改善には間に合わず。

よって、過度なリスクは取らずに、安全なラインで確実な走りをし、それでも確実に結果は出せると考えていました。

7)食事の内容

現地に入っても普段と変わらず、朝食はゆっくりベーカリーでパンとカフェ。
お昼は軽めにフルーツやシリアル
夜はゆっくりビールとアメリカンな食事を。
特別なことはせずに、いつも通り。

当日の食事
朝 コース試走後、ベーカリーにて
クロワッサン デニッシュ など、とカフェ。
こまめにシリアルとブドウをつまみながら、レースへ。

8)Lap Time data

18th YONAMINE Eri JPN 42:40.22 (18)
9:24.77 (19)
11:46.72 (18)
9:26.03 (16)
12:02.70 (23)

9)目標数値・順位に届かなかった理由。

コンディション
出力データを見る限り、パーソナルベストを更新しています。
順調に推移したのですが、最後のラップタイムデータの落ち込みを見ると、もう少し、現地での調整を軽めにし、疲労感が全くない状態で臨ませるべきかもしれません。

パーソナルベストは世界選手権で毎年更新できています。

しかし、彼女はコーナリングに大きな問題を抱えています。
体幹が弱いため、コーナリングGに耐えられない。
よって、コーナリングスピードが上がらず、恐怖から減速してしまう。
それは、2年前から改善があまり見られていません。
改善のためのトレーニングは8月から主体的に取り組み始めています。
結果につながってくるまでには半年ぐらいの積み重ねが最低必要です。

作戦について
事前準備はいつも通り完璧に行えました。
メカニックも責任をもって私がすべてを全う。
現地で出来ることは、すべて行えたと感じています。

無線による的確な誘導が出来なかったこと。
これはもう、どうしようもなく悔やまれます。

機材について
バイクとのマッチング、一体感、非常に良かったと感じます。

スタート前

photo by Sonoko Tanaka

10)失敗を繰り返さないために、

目標を達成するために。

フィジカル
世界TOP10の選手と比べると、明らかに体の線が細い。
このような、路面が悪く、重い状況だと、体幹の弱さが際立つ。
身体の抑えがきかず、疲労し、コーナリングGに耐えること出来ず、
スピードが上がらない。

よって、現在継続し始めている体幹トレーニングを引き続き、徹底して行い、強固な身体を作り直す必要がある。

体脂肪を下げ、軽い体で臨む。
そのスタイルは間違ってはいなかったが、私たちが目指すターゲット順位では、現在適正ではない。

適切な体幹トレーニングによって、体重が増えたとしても、それは、結果のために必要な重量と認識した。

コンディショニング
恵理さんの感覚からしても、今回のコンディショニングは成功したといえる。
パーソナルベストを一番プレッシャーのかかる世界選手権で毎年更新できている。

しかし、オリンピックイヤーは獲得枠を巡る戦いのため、周り、他国の伸び率が非常に高い。

たとえ、自分たちがパーソナルベストを更新したとしても、他国の伸びに負けてしまうと、このような結果になる。

感覚的に、もう一段、ベースパワーを上げて臨む必要がある。

機材
これ以上ないバイクとライダーマッチングができ、適切なエアロポジションも維持できているので、大きな改善点はない。

無線誘導について
私と恵理さんがこれで繋がるかどうか。
大きく順位もタイムも改善できる。
しかし、JCFの組織上の問題でサポートカーからの誘導が出来ない状況。
当面、コースサイドから強力な無線機を使用して、誘導できるところは行う。これでまずは最低限の改善はできる。

コーナリングテクニック
大きな改善が必要。しかし、改善できた時には大きくタイムを削減できる。
質の高いITTレースへの出場が最短距離だが、残念ながら、なかなか数が少ない。
よって、近隣(居住区)で適切な練習ができるコースをすぐに探す。
そこで、レーススピードでのコーナリングGに耐える練習を行う。

以上

今後とも、応援叱咤激励、よろしくお願いします。

FORZA・YONEX所属
武井きょうすけ

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